Q1. APHRODITEは経年変動の解析につかえますか?
A: 各日のデータに同胞しているrstnという指標に注意し、そのグリッドに雨量計が存在するかどうかをまず確認してください。対象とする期間にrstnに変化がなければ使用できると考えます。
Q2. APHRODITEは極端現象の解析につかえますか?
A: V1101, V1101EXは、使えないと考えてください。もちろんどのような極端現象をターゲットにするかによります。台風などイベントの解析ならよいかもしれませんが、その統計的性質、その時間空間変化は難しいです。極端現象に限らずAPHRODITEを使う場合には、各日のデータに同胞しているrstnという指標に注意し、そのグリッドに雨量計が存在するかどうかをまず確認してください。APHRODITE-2で作成したV1801は、極端現象の解析に使えるようにアルゴリズムを改良しています。V1801では0.05度グリッドの内挿値を計算した際に0.05度グリッドでは地点があればその値が保存するような内挿を試みています。一般公開するものは0.25/0.5度に再グリッド化したものです。グリッド化によりどのように極端降水特性がかわるかについて統計的解析を行い論文投稿準備中です。詳しくは、その結果を踏まえて、極端現象の解析にはお使いください。
Q3. APHRODITE-2 のプロダクトは何が改善されるのですか?
A: APHRODITE-1は、「アジアの水資源への温暖化影響評価」のため、雨量計データをできるだけ多く集め、山岳降水の表現を工夫し、解析期間を通じて同じ手法を適用しました。そのこととtrade-offになる次の課題があります。APHRODITE-2の目的は、極端現象解析や予報の改善に役立つデータセット構築を目指したアルゴリズム改良です。異なる日界を混ぜず日界を明らかにしたプロダクト、および日界補正プロダクトを作成します。
・ソースにより日界(24時間の区切り)は異なります。品質管理(QC)の結果、2つのデータセット間で1日ずれているとわかった場合でも両方のデータセットを入力として使用したケースもあります。全球気象通信網(GTS)に各国気象庁が通報したデータは、NOAAからダウンロードできますが、APHRODITEが各国から独自に入手した多地点のデータがある場合でもGTS由来の速報データも併用しています。
・QCの結果、2つのデータセット間で単位が10倍違う、2.54倍違う(ミリとインチの誤変換)ケースが検出されていますが、そのような場合でも両方のデータセットを使っていました。V1801R1, V1901は、そのようなことはありません。
・グリッド化の際、日気候値からの「割合」を内挿しています。観測が少ない年でも、その季節の気候値的分布が山岳降水パターンの表現を補助し、結果が良くなるためです。しかし、例えば気候値で極小、極大地域が近接し、極小地域で強い降雨イベントがあると、非常に大きい「割合」が内外挿され気候値的に降水の多い場所に異常に大きい値が算出されました。それをなくすアルゴリズムの工夫をすでに施していますが、観測データのない地域の極端に大きい値には注意が必要です。
・内挿の基本は、値を求めるグリッド(0.05度格子)に対し周囲の降水観測地点が近いほど重みを高くした平均です(地形を考慮した工夫は行っています)。つまり、そのグリッドの非常に近くに観測値があり極端降水(大きい、あるいは降水なし)があったとしても、周囲の点の値も使って、グリッド値が計算されます。このため地点の値は保存しません。公開版はこうして求めた0.05度グリッドデータを、0.25度、0.5度にしたものです。
・QCでとりのぞいた大きい値には、実際の豪雨(Extreme)が含まれている場合があります。
>> 0.05度グリッド版での改善例について、V1801_R1の Readme をご覧ください。
Q4. APHRODITEデータV1101の日界はどうなっているのか?
A: 私たちが入手したデータの日付そのまま、グリッド化しています。例えばインドでは朝8:30(=世界時03UTC)に24時間降水量を記録します。APHRO(グリッドデータ)はその記録した日付の降水量となっています。ゆえに、インド、ネパール、ブータンでは、APHROの12月25日の降水量は、世界時の12月24日の03UTCから、12月25日の03UTCまでの24時間となります。
APHRO_JPは、アメダス観測データ日雨量のみを用い、日本の24時間ですので、12月25日の降水量は、12月24日の15UTCから12月25日の15UTCとなります。2017年7月に公開したAPHRO_JPアップデート版は、混乱をさけるため、日本の時刻版と、世界時版の2種類を公開し、EOD (End of the Day)というパラメタも入れています。EODは日本時刻版は24、世界時版は15です。
Q5. 生データ(地点データ)にアクセスしたいのですが
A: それはできません。データ提供機関や提供プロジェクトなどが、第3者配布を禁じる場合がほとんどであるからです。GTS由来のデータや制限のないデータについて、APHRODITEが同一フォーマットにし、品質管理を施したものは他の方に役立つ場合もあり、将来的には研究協力者やコミュニティーに渡せればとも考えますが、現状では非常に少ないメンバーでAPHRODITE-2を実行しているため、難しいです。
Q6. ソースコードを見たいです
A: 一部を除き、それはできません。APHRODITE-1のメンバーと、プロジェクト終了時(2010年度末)協議し、そのように決定しました。ただし、QCコードなど当時の開発担当者がソースの公開を許可している場合は開示できます。
Q7. APHRODITE降水は少ない(過少評価している)ように思いますが
A: はい。V1101ではQ3に回答した理由で「できるだけ多くのデータをとりこむ」方針により、たとえばGTS通報値には観測しない場合に、欠測コードでなく無降水として報じられたものも多く、APHROではわかっていてもGTSを使用しています。また、地点保存していないため記録的な豪雨の値をグリッド値が必ずしも出していないケースも多くあります。さらに、APHROで適用した客観的QCで、ある統計値以上のものを除去しており、衛星データとの比較の結果、それらが真にExtremeだった例がかなりあることがわかってきました。これらは過少評価に効いてきます。
>> 0.05度グリッド版での改善例について、V1801_R1の Readme をご覧ください。
Q8.アジア以外の場所では作らないのですか?
A: 要請があり、データの提供があれば作れますが、限られたhuman resourceで実施しているため、すぐには難しい場合が多いです。今後のAPHRODITEの展開の参考になりますので、希望がありましたら、提供可能なデータを明記の上aphrodite.precinfo(at)gmail.comにご連絡ください。また、APHRODITE-2のWorkshopに参加していただくと作成できるようになります(ソースコードは提供できませんが、linuxマシンで計算できる実行形式ファイルを提供します)。
Q9.Workshopの資料にアクセスできますか?
A: 今のところ、Workshopの資料は、Workshop参加者にのみ提供しています。
Q10. 生データを提供したらどのようなbenefitがありますか?
A: 日降水量データの提供者には、Workshop資料や公開可能なデータ作成ツールおよび成果物(一般公開しない0.05度グリッド)をお渡しします。
Q11. Workshopを開催してもらうことはできますか?
A: 可能です。ただし、生データをAPHRODITEに提供していただけること、linuxを扱える参加者がそれらを用意すること、講師(APHRODITE-2メンバー)の旅費をカバーし招聘していただくこと、日程の調整がつく場合に限られます。
Q12. APHRODITEをひとたびダウンロードしたあと、所属機関・研究グループで共有したい。
A: APHRODITEでは、エラー情報や更新情報をユーザーに伝えるためにemail addressを管理しています。担当技術者・学生の異動や卒業で連絡がつかなくなることがありますので、アカウント登録サイトhttp://aphrodite.st.hirosaki-u.ac.jp/download/create/ でemail addressを入力してください(10秒です)。それが不可能な場合は、グループ代表者から aphrodite.precinfo"at"gmail.com にユーザーのemail addressをまとめて送信してください。
Q13. APHRODITEデータから特定の日の降水分布を自動表示させダウンロードしたり、他のデータと比較できるツールを作りたい。自前のそのような表示解析システムにAPHRODITEデータを載せたい。
A: 現在それは、次の3つの理由により許可していません。
1. APHRO_JPを除き、日界が混在しています。日単位のデータ表示やDLを許可し日界不明データの一人歩きにより誤解を招くのは不本意です。
2. プロダクトリリース初期にErrorが判明することがしばしばあります。また、Reference論文が受理公開していない段階では、他のサイトからの公開は不適切と考えます。
3. ユーザーにError情報やUpdate情報を伝えるので、email addressを管理しています。
以上の点から、定期的にユーザー情報を我々に伝えてくださるのであれば、1や2の条件を満たすデータについては、表示や再配布を許可しています。
(e.g. DIASからもV1101など再配布していますが最新データは当該サイトのみです)
Q14. APHRODITEを使って2次的データを作成し公開したい
A: PI までご相談ください。APHRODITEデータの作成過程を理解し、間違った使い方をされていないこと、公開時(サイトなど)にAPHRODITEプロジェクトに謝辞を加えるとともに、論文を適切に引用すること、などの条件から判断します。
Q15. 今後の展開の予定は?
A:Technical staffやsecretaryを雇用する規模の予算がないので、大幅な展開はすぐには難しいですが、当面科研費や二国間交流事業などで協力関係がある地域のデータ作成を行う予定です。APHRODITE-2(2016-2018年度の3年間)では、対象地域をモンスーンアジア(MA)に絞ったのですが、APHRODITE-1(2006-2010年度の5年間)で後半に雪氷圏を扱ったように、今後中央アジア、ロシア、中近東のデータ作成・更新も、協力者があれば実施したいと考えています。温暖化・水資源の問題や地域の適応策策定が国内外で重要な課題になっており、豪雨に続くlandslideのリスク評価や災害緩和のためにも、山岳域の降水量を表現できているAPHRODITEの手法によるデータ作成は必要であり、現地の方と協力して現地の方が継続してデータを作成できる仕組みを作りサポートするのが夢です。
なおデータ公開については、日本域で捕捉率補正や内挿手法の改良、西日本豪雨災害(H30年7月豪雨)時の時別データ作成をAPHRODITE-2の期間に行ったので、関連論文が受理されたら公開も考えております。共同研究のご希望は直接PIまでご連絡ください。